価格が割り引かれて取引されるロシア産原油
中東産原油の価格は、ロシアと同様に欧米による制裁対象であるイラン産を除けば、国際価格であるブレント原油の価格とほぼ同じ水準だ。一方で、欧米による制裁対象であるロシア産原油は、ウラル原油もエスポ原油(ESPO原油、東シベリア太平洋(エスポ)石油パイプラインを通じて供給される原油)も、ブレントより低い価格となっている。
ウラル原油に関しては、ヨーロッパ勢が「脱ロシア化」の観点から輸入を手控えるが、インドが一大需要家として台頭している。ロシアは友好国であるインドとの関係が深まれば、欧米による制裁の影響が緩和されると期待しているが、ウラル原油の価格形成にインドの意向が強く反映されるため、ロシアの期待の通りに事が運ぶかは不明だ。
大量のロシア産原油を輸入しているインドは、ロシア産原油を他の中東産原油と天秤にかけることができる有利な立場にある。実際に2022年時点におけるインドの原油輸入の国別構成を確認すると、ロシアの14.4%に比較して、イラク、サウジ、アラブ首長国連邦(UAE)の中東3カ国が約50%を占めていることが分かる(図表)。
【図表 インドの原油輸入先の国別内訳(2022年)】

制裁対象であるロシア産原油が、非制裁対象である中東産原油に比べて割安でないと、インドがロシア産原油を増やす道理はない。ウラル原油の一大需要家がインドにシフトすれば、欧米からの制裁の影響は緩和するだろうが、インドの意向が色濃く反映された水準で価格が形成されることになるはずだ。
エスポ原油の場合も、中国の意向を汲む形で国際価格よりも低い水準で価格が形成されるはずだ。そのため、ロシアの財政が十分に潤うほどロシア産の原油価格が上昇するためには、ブレントや中東産の原油価格がかなり上昇する必要がある。しかし、サウジがロシアをサポートする観点から、そうした展開を演出することはないだろう。