今川氏真が立てこもった掛川城

 NHK大河ドラマ『どうする家康』で、新しい歴史解釈を取り入れながらの演出が話題になっている。第12回放送分の「氏真」では、徳川勢が今川領を攻め落としていき、家康が今川氏真と対面。二人はともに少年時代を過ごした駿府での記憶をたどりながら、内に秘めたる思いを口にする。知られざる氏真の素顔に迫った回となった。第12回の見どころポイントについて、『なにかと人間くさい徳川将軍』の著者で、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

今川氏真と徳川家康の関係とは?

 大河ドラマ『どうする家康』の第12回は「氏真」というタイトルのままに、溝端淳平演じる今川氏真がクローズアップされた。

 氏真は天文7(1538)年に今川義元の嫡男として生まれる。幼名は龍王丸(りゅうおうまる)。今回のドラマでは、人質として今川氏に来た幼き家康に対して、氏真自身が幼名を名乗るシーンがあった。

 その後の家康はというと、14歳で元服。義元から「元」の字をもらい、幼名の「竹千代」から名を「元信」とし、その後「元康」に改名する。

 また家康は妻として、今川義元の姪にあたる瀬名を迎えている。近年は「瀬名の母は義元の妹ではなかった」とする説も有力視されているが、いずれにしても、今川氏の重臣・関口氏純の娘を妻に迎えたのだから、家康もまた重臣として期待されていたことは確かだろう。

 そんなふうに人質として今川に身を置いた家康が、氏真とどんな関係性を築いていたのか。はっきりしていないので想像するほかないが、家康よりも5歳年上という年齢差をふまえると、ドラマのように家康が氏真を「兄」として慕っていたのかもしれない。