「さっさと出て行ってくれということですよ」

 幸い母親の体調は順調に回復へと向かったが、退院が視野に入ってきたある日、Aさんに施設から電話がかかってきた。電話の主は施設の看護師だった。

「当施設の規定でCVポートを装着した方は受け入れられません」

 突然の通告に驚き、施設に説明を求めたが、数日後、面会した施設長から入居一時金の返還額が書かれた書類が一枚渡されただけだった。

「要は、さっさと出て行ってくれということですよ。でも、おかしくないですか? 最期まで面倒を見るといっておきながら施設の規定でできないというのなら、代替施設くらい紹介してくれてもいいじゃないですか。そもそも、病院は施設のすぐ近くなのに、施設の看護師は一度として病院に足を運んだ様子がない。病院からの退院の打診の電話を受けて、慌てて僕に連絡してきたようなんです」

 この申し出には病院側も驚いたようだ。困惑するAさんに担当看護師やケースワーカーが親身になって相談に乗ってくれて、幸運にも2週間後、母親は近隣の別の介護施設に移ることができた。

 何軒かの施設を下見する中で、Aさんは気になる話を聞いた。