都市部の介護人手不足は深刻さを増す

 近年、都内や首都圏の再開発エリアなどに、こうした高所得者層向け高級老人ホームが林立している。

 多くは前述のような「ターミナルケアまで対応するから安心」を売りにしているが、巨額の入居金を負担すれば最期まで手厚い介護が受けられると考えるのは早計かもしれない。

 介護業界の人材難が叫ばれて久しいが、医療業界と異なり、より人手不足が深刻なのは地方よりもむしろ都市部の方だ。

 厚生労働省の資料によると、ホームヘルパーや介護支援専門員、介護福祉士など、介護関係の職種の有効求人倍率は、多くの都道府県が4倍以内に収まる中で、東京(6.97倍)や愛知(6.49倍)の数値が突出している。

出所:社会保障審議会・介護給付費分科会の資料「介護人材の処遇改善について」
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 背景には、地方ではすでに高齢化が進行したのに対し、人口の集中する都市部はむしろこれから本格化していくことが指摘されている。

 2025年には、日本の人口の8%弱を占める団塊の世代(1947~1949年生まれ)が全員後期高齢者(75歳以上)に移行する。そこから、高齢者人口がピークを迎える2040年頃までは都市部で介護難民が頻出する可能性がある。

 自宅の近くで親を看取りたいと考えるなら、あるいは、自身が高齢になっても生活利便性の高い都市部を離れたくないのなら、施設任せにせず「我が家の介護プラン」も練っておく必要がありそうだ。