コロナ禍で様相が一変
入居者は単身女性が圧倒的に多く、東京の下町育ちの母親は当初「山の手の奥様方」との付き合いに戸惑っていたという。
それでも、生来の社交性を発揮するうちに親しい仲間ができ、施設での生活を楽しむようになった。Aさんが施設を訪れるたびに、施設であった出来事を面白おかしく話してくれたという。
施設内には当初、遠方から訪れた家族が安価で宿泊できるゲストルームがあったのだが、急遽、居室に改装されることになった。それだけ入居希望者が多かったためだ。
大浴場もあり、母親は毎日入りに行くのを楽しみにしていたのだが、認知機能が低下した入居者が洗い場や浴槽内で粗相をしてしまう事件が頻発し、大浴場通いを止めることにしたそうだ。
はじめの2~3年はそんな他愛もない話題が多かったのだが、コロナ禍に入って様相が一変する。
母親が楽しみにしていた習い事の教室やイベントは次々中止となった。それ以上に「親しいお友達がいなくなったのがつらい」とこぼしはじめた。