財布の中で無造作に扱われることが多い1円玉だが(写真:アフロ)

4月から給与のデジタル払いが解禁されるなど、キャッシュレス化の普及が進む。その中で扱いづらくなっているのが1円玉、5円玉、10円玉といった小額硬貨だ。近年はATMや金融機関の窓口で預ける際にも手数料を徴収されるようになっている。小額硬貨廃止論を唱える人もいてすっかり“社会の厄介者”となった感もある1円玉だが、一部の人からはコレクションコインとして熱視線を浴びていることをご存じだろうか?

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

消えた「小銭貯金」「500円玉貯金」の記事

 愛知県名古屋市の亀岳林万松寺が賽銭に使えるオリジナルコインを発行し、SNSなどで話題を呼んだ。境内の自動販売機で購入でき、同寺でのおみくじやお守り、仏花の購入代などにも充てられるという。コインの購入にはキャッシュレス決済も利用できる。

 キャッシュレス化の進展を背景に電子マネーによる賽銭を受け付ける神社仏閣が増えている。そうした中で、同寺では賽銭を「仏様への祈願を小銭に託す行為」とし、賽銭箱にチャリーンとお金を入れる参拝の伝統的な風習を残していきたいと、コインの導入に踏み切ったようだ。

 ならば従来通り小銭の賽銭を続ければいいのではないかと感じる方がいるかもしれない。しかし、寺社サイドにはそうも言っていられない差し迫った事情がある。硬貨を入金する際、金融機関で手数料を徴収されるようになっているからだ。

 例えば、ゆうちょ銀行では2022年1月以降、一定枚数を超える硬貨の入金や硬貨による払い込みの際は枚数に応じた手数料がかかる。仮に窓口で硬貨を2万枚入金したとすると、手数料だけで2万2000円を支払うことになる。1円玉を大量に預け入れる場合は手数料が預け入れ額を上回ってしまう。

 こうした流れを受け、最近めっきり見かけなくなったのがマネー誌や女性誌などでの「小銭貯金」や「500円玉貯金」を推奨する記事だ。かつては身近な積み立て貯蓄の王道だったが、このご時世ではいささか分が悪い。

亀岳林万松寺では、みずほ銀行の「J-Coin Pay」によるデジタル賽銭を導入する一方で、賽銭に使えるオリジナルコインも発行する(プレスリリースより)