ドラマ版では鮎川樹を松坂桃李が、川奈つぐみを山本美月が演じる。そして三角関係の末に恋敗れる好青年・是枝洋貴(愛称はヒロ)を瀬戸康史が演じる。ご存知の方も多いと思うが、ドラマでは逆転でフラれてしまうヒロ役の瀬戸康史が、現実には山本美月と2021年に結婚。場外での再逆転を果たした。

 松坂桃李の車いす演技がすごい。かつてこれほど車いすの生活について考えさせられたドラマはない。

 そして樹の「建築家としての姿勢」にも惹かれた。例えば、雑誌の取材に樹が答えるシーン。雑誌記者が「鮎川さんにとって理想の建築とは?」と質問すると、樹はこう答える。

「そこに暮らす人たち全員が誰1人我慢や妥協をすることなく、それぞれを尊重しながら共存できる建築です」

 その記事は、「心のバリアフリーを目指す車椅子の建築士」という見出しで雑誌に載る。そのエピソードを見て、なるほど、と思った。バリアフリーというと物理的な障壁だけに考えが行きがちだ。それを障がいがある人、周りにいる人の“心”から考えていくというのは、確かにその通り。病院でも、LGBTQでも、どんなバリアに関しても言えそうな話である。

 前述の『協奏曲』と同様、もし三角関係のグダグダがもう少し薄かったら、と思わずにはいられないドラマだ。

…といった感じで、惜しげもなく5つの名セリフを出してしまったが、書籍の面白さはこんなものではないのでご安心を。以下の目次を見て興味を持った方はぜひ実物を手に取っていただきたい。

目次
PART1 建築家はモテる?
映画『私の頭の中の消しゴム』、ドラマ『結婚できない男』、ドラマ『恋仲』、映画『建築学概論』、ドラマ『冬のソナタ』

PART2 建築家はつらいよ
映画『摩天楼』、映画『みんなのいえ』、ドラマ『協奏曲』、ドラマ『ノースライト』、映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』、映画『マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して』、映画『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』

PART3 建築家ダイバーシティ
映画『これが私の人生設計』、映画『テルマエ・ロマエ』、ドラマ『パーフェクトワールド』、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、映画『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』、ドラマ『10の秘密』、映画『海辺の家』、映画『火天の城』

PART4 建築の裏側を知る
映画『タワーリング・インフェルノ』、映画『ダイ・ハード』、映画『パラサイト 半地下の家族』、ドラマ『隣の家族は青く見える』、ドラマ『ラグジュアリー・シドニー~超高級住宅ドキュメンタリー~』、映画『風速40米』

PART5 とにかく建築が好き!
ドラマ『名建築で昼食を』、映画『ホテルローヤル』、映画『建築と時間と妹島和世』、映画『カメラを止めるな!』

コラム 名建築ここにあり/現実をしのぐ空想建築
映画『北北西に進路をとれ』、映画『時計じかけのオレンジ』、映画『ブレードランナー』、映画『未来世紀ブラジル』、映画『ガタカ』、映画『コロンバス』、映画『モスラ』、映画『ニッポン無責任野郎』、映画『図書館戦争』、映画『ロストエモーション』、ドラマ『半沢直樹』、映画『総理の夫』、映画『ドライブ・マイ・カー』、映画『メトロポリス』、映画『スター・ウォーズ』、映画『ロード・オブ・ザ・リング』、映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、映画『ハウルの動く城』、映画『チャーリーとチョコレート工場』、映画『ザ・タワー 超高層ビル大火災』