(英エコノミスト誌 2023年2月18日号)
投資家は好況に賭けている。実際は荒れ模様になる公算が大きい。
過去1年ほどの株式・債券投資が悲惨な成績に終わったことから、人は金融市場が楽観論に浮かれていることに気づかなかったかもしれない。
しかし、今日の投資家は「浮かれている」としか描写しようがない。
昨年秋から、世界経済の最大の問題であるインフレが大した騒ぎを引き起こさずに収まっていくとの見方を強めているからだ。
ゴルディロックス経済への期待
その結果、2023年末にかけて利下げがあり、ひいては世界の主要国(そして最も重要なことに米国)が景気後退を回避できると多くの人が考えている。
投資家は今、資本コストが低下する一方で企業の利益が順調に伸びていく「ゴルディロックス(過熱も冷え込みもない適温)」経済を想定して株価評価を行っている。
こうした状況の好転を見越して米国のS&P500種株価指数は年初から8%近く上昇している。
予想利益に基づく株価収益率(PER)は約18倍で、パンデミック以降の基準に照らせば低いものの、2002~19年によく見られた変動範囲では上端に相当する。
しかも、2024年にはこの利益がほぼ10%増加すると見込まれている。
急騰したのは米国市場だけではない。暖冬でエネルギー価格が抑えられたこともあり、欧州の株式は米国以上に跳ね上がった。
新興国にもマネーが流れ込んでいる。中国のゼロコロナ政策撤廃と、米国の金融政策緩和期待を受けたドル安という二重の恩恵に浴しているためだ。
世界的にインフレが鈍化しているが・・・
これはバラ色の未来だ。
残念ながら、本誌エコノミストが最新号で論じているように、恐らくは見当違いだ。
インフレを相手に回した世界の戦いは、まだ終わりにはほど遠い。そして、これは金融市場が今後、ひどい調整局面に見舞われることを意味している。
投資家の期待感を高めているものは何か。その兆候として、2月14日に発表された米国の消費者物価指数(CPI)を見てみよう。
この統計で見る限り、1月までの3カ月間のインフレ率は2021年に入ってからでは最も低くなった。