「トランプ級戦艦」の建造計画を発表したトランプ大統領(2025年12月22日、写真:ロイター/AP)
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(英エコノミスト誌 2026年1月17日号)

そして、民間企業を国家の道具として使うドナルド・トランプのやり方では、世界は安全にならない。

 近代史の大半において、多国籍企業と国家は手を携えて活動してきた。英国とオランダはそれぞれの東インド会社から資金提供を受ける一方、その見返りとして軍事・外交の面で支援を行った。

 ドイツのクルップと日本の三菱は国家の工業化を促進し、両国政府は外国で鉱山と市場の獲得に動いた。米国の介入は、石油会社が外国で資源を確保するのを後押しした。

 その後、1980年代からしばらくの間は政府が一歩退き、くびきを逃れた多国籍企業が世界中に進出した。

 しかし、今、砲艦資本主義が復活を遂げている。

国家干渉の復活

 世界有数の大企業のトップが1月下旬、スイスの山岳リゾート地として名高いダボスに集まる時、会場は恐らく、国境をまたぐ企業取引に政府が思いがけず介入してくる話で持ちきりになるだろう。

 欧州で再び戦争が始まり、権威主義的な中国が強硬姿勢を見せるなか、政治家は企業活動の世界地図を描き直し、多国籍企業が事業展開できるところとできないところの線引きをしている。

 米国のドナルド・トランプ大統領はさらに踏み込んでいる。同氏は企業を国力を強化する便利な道具と見ている。

 米国の石油会社の経営者にはベネズエラの首都カラカスに戻るよう促し、言う通りにしなければ報復するぞと脅している。

 防衛企業には自社株の買い戻しをやめるよう圧力をかけ、最先端の半導体を中国に販売するテクノロジー企業には売り上げの一部を政府に「上納」するよう要求した。

 こうした国家干渉の復活は、西側の多国籍企業の業績を不安定にする。

 合計すれば年間の売上高がおよそ23兆ドル、利益が2兆4000億ドルに達し、世界各地にいる従業員も数百万人に上ることから、その影響は甚大だ。

 国の干渉は世界の富が減ることを意味する。そして必ずしも安全な世界にはならない。