シーボルト書簡 ウォーターマーク 神田外語大学附属図書館所蔵

(町田 明広:歴史学者)

幕末維新史探訪2023(4)新発見の書簡から読み解くシーボルトの実像①https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73673

筆者と神田佐野文庫との関わり

 日本の蘭学に多大な影響を与え、日本の近代化に貢献した医師で博物学者であるフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796~1866)の書簡は、日本国内に6通が現存している。しかし、シーボルト事件(1828)による国外追放前に、しかも日本での具体的な活動(植物研究)について記されたものは、2014年12月に神田外語大学の「神田佐野文庫」(洋学文庫)で見つかった書簡が初めてである。

 筆者は、神田外語大学の日本研究所の副所長として、同文庫の調査責任者を務めてきたが、筆者自身、今回の発見には大変な驚きを覚えた。書簡そのものが貴重であることはもちろんのこと、記されている内容が驚くべき新事実であり、極めて意義深いものであるからに他ならない。

 ところで、本書簡が含まれていた神田佐野文庫とは、神田外語大学附属図書館が昭和62年(1987)に京都の書店・若林正治氏のコレクションを入手し、所蔵している洋学資料群を中心に構成されている。同コレクションは、幕末から明治初期に刊行された洋学書が中心で、総計1416冊に及んでいる。

 筆者は2013年に神田外語大学に奉職したが、神田佐野文庫の調査も業務の一つとなっており、まずはコレクションの全体像を把握するために、目録作成に着手した。神田佐野文庫プロジェクトのスタートであり、筆者は期せずしてそのリーダーとなったのだ。

神田外語大学附属図書館