大物フィクサーの後ろ盾

──「葛西があそこまでできたのは、瀬島龍三の後ろ盾があったからです。葛西のあのやり方は瀬島流とも言えます」という、ある国鉄幹部の言葉を紹介されています。葛西さんは瀬島さんからどんなやり方を学んだのでしょうか。葛西さんと瀬島さんの関係はどのようなものだったのでしょうか。

森:背景にはアメリカからの要請もありましたが、国鉄の民営化には、その他の分野も含む大きな民営化事業「三公社五現業」へとつながっていったという側面があります。

 中曽根さんは、それまでの自民党となれ合ってきた国鉄の守旧派とは異なる若手の「国鉄改革三人組」を使って国鉄改革を進めました。

 同時に、中曽根民活の最大のブレーン、あるいは黒幕などとも呼ばれたのが、陸軍育ちで大本営参謀や関東軍の参謀を務め、シベリアに抑留もされた瀬島龍三さんでした。瀬島さんが中曽根民活の作戦参謀だったのです。

 瀬島さんは当時、民営化などを推進して行政組織の見直しによる歳出削減を行う「第二次臨時行政調査会」通称「土光臨調」の委員という立場でした。葛西さんが瀬島担当の窓口となり方針を授かる。葛西さんも瀬島さんに進め方など教えを乞う、という関係だったようです。

 瀬島さんはキャピトルホテル東急に個人事務所を構えていて、そこに葛西さんが日参して相談していました。どんなことを葛西さんと瀬島さんがその時に話していたのかは明かされていません。

「葛西さんが国鉄改革を成し遂げたのもバックに瀬島さんという大物フィクサーがいたからだ」という旧国鉄幹部は少なくありません。

──キーパーソンを見つけてその人を取り込み、トップダウンで相手組織を変えていく、という方法を葛西さんは瀬島さんから学んだというお話もありましたね。

森:そうです。相手方のキーマンを見つけて、その人を取り込んで一緒になって進めるという方法を葛西さんに授けたと言われています。