一方で、警察や消防、海上保安庁では階級に関係なく60歳定年となっている。さらに、2021年には国家公務員と地方公務員の定年を65歳まで延ばす関連法が成立したため、これらの人々は定年と同時に年金が支給されることになる。

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 この格差を解消すべく、自衛官には退職金とは別に「若年定年退職者給付金」が支払われるが、給付は退官後の4月または10月と、翌々年の8月の合わせて2回だけ。民間の定年延長に伴い増額も予定されているようだが、現行制度では総額1000万円前後で、年金受給開始まで10年かそれ以上であることを考えると、1カ月あたり8万円ほどにすぎない。

 再就職をしなければ生活は成り立たないが、50歳を過ぎてからの就職は簡単ではなく、年収の大幅減を余儀なくされている。それでも適職が見つかればいいが、仕事のマッチングが上手くいかず無職になると、退職金と給付金を切り崩して暮らしていかなくてはならないのである。

 冒頭、NATO基準では防衛費に「軍人恩給」が含まれると書いたが、日本の軍人恩給は旧軍人ならびにその遺族に支給されるもので、現在の自衛官には支給されない。

50代半ばで次の働き口のことを考えなくてはならない

 あらかじめ断っておくが、ただでさえ募集が厳しいと言われている中で、わざわざネガティブな情報発信をして追い打ちをかけたいわけではない。しかし「防衛力の抜本的強化」と言うならば、この人的基盤問題こそ真っ先に手をつけるべきであり、とにかく良い方向に進むことを心から願いながらこの原稿を書いている。

 自衛官の退官行事を何度か見たことがあるが、見送りのために集まった多くの隊員の中に退官者の家族の姿もあり、そこにはまだ幼い子供がいる場合も多い。一般社会で50代半ばといえばまだまだ働き盛り。その年齢で、父親は門を出た瞬間から家族を養うため次の働き口のことを考えなくてはならないのだ。

 因みに米軍などでは、軍人向けの年金があり、20年以上の勤務で退役時からすぐに給付を受けられる。それだけでなく、医療ケアなど、退役軍人のためのサービスも充実している。

 基本的に戦地に行かない自衛隊は米軍とはリスクの大きさが違うとは思うが、自衛官は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託に応える」という「服務の宣誓」を行っている。

 約30年間「身をもって責務の完遂に務め」、自衛隊に人生を捧げ、部下を育て、災害派遣で人々を助けていた自衛官に、この処遇が適切なのか。

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