CO2増加による収量向上効果も
品種改良にあたる育種家は、既存品種の交配をしたり、放射線で変異を起こしたりして新しい品種を創り出す。それを育てて、性質の良いものを選抜する。
このような過程が、どのような気象条件の下で行われているかというと、100年前の気温ではなく、もちろん、現在の気温の下だ。つまり、現在の、温暖化した日本に合った品種が自動的に選ばれている訳だ。
のみならず、この過程で、CO2の濃度上昇に伴う便益も自動的に取り込まれている。大気中のCO2濃度は過去150年間で約1.5倍になり、約280ppmから約410ppmになった。これは植物の光合成を大いに高める。
いま新しい品種を開発してゆくとき、育種家は現在のCO2濃度である410ppmの環境でもっともよく育つものを選抜している。決して150年前のCO2濃度である280ppmに合わせている訳ではない。
この点は、CO2の環境影響を総合的に考える際にじつはとても重要だ。
世界の作物のヘクタール当たりの収量が向上しているのは、技術の利用によるものだとよく説明されているが、CO2の増加による効果(施肥効果という)もかなり効いている。そしてその効果は、このような品種改良過程を通じて、できる限り、取り込まれてきたはずだ。