方針を転換しなければ、中国の新型コロナに対する抵抗力は低下していく。最も新しい変異型ウイルスは、デルタ型より感染力の強いオミクロン型よりもさらに感染力が強い。
重症化や死亡から身体を守る力は、ワクチンを打ったうえに感染もした人に比べるとワクチンだけの人の方が速く衰える。
それにもかかわらず、中国はまだ4度目のワクチン接種を始めていない。
本誌のモデルによれば、国民の90%がブースター(追加接種)を済ませ、かつ発症者の90%が最高品質の抗ウイルス薬を利用できたとすれば、ウイルスが拡散し放題の状況であっても死者は6万8000人にとどまる。
膨らみ続けるコストと感染急増のジレンマ
ワクチンと抗ウイルス薬がふんだんにある世界では、習氏のゼロコロナ政策はもはや恩恵がなく、経済と社会のコスト負担ばかりが膨らみ続ける。
空では国内線の便数が前年比で45%減っており、陸では道路での貨物輸送が同33%減っている。都市部の地下鉄の旅客輸送量も同じく32%落ち込んだ。
都市部の若者の失業率はほぼ18%で、2018年の2倍近くに達している
今年春に見られた前回の感染のピークとは対照的に、今ではすべての大都市に行動制限が導入されている。解除を何度かはさみながら行動制限が数カ月間続くところもある。
人々が街頭に出て抗議するのも無理はない。
その結果、習氏はジレンマに直面している。
新型コロナを抑制し続けることは社会的にも経済的にも負担の大きな事業になったが、その負担を減らそうとすれば流行を引き起こす恐れが出てくるのだ。
さらに悪いことに、手に負えない新型コロナ拡大と耐えがたいロックダウンの間にある「落としどころ」は、たとえ存在するとしても、今や縮小しているように思われる。
11月19日、従来ほど厳しくない20の制限措置を発表することで中国政府が対策を緩和しようとしてから1週間ほどしか経たないうちに、中国の状況を都市ごとに追跡している調査会社ガベカルは、全国で感染が拡大して制限が急増していることを探り当てた。