(英エコノミスト誌 2022年11月26日号)

独裁者が自らを正当化するために言論を弾圧することは歴史が証明している

本当のニュースを知りたいロシア人は亡命中の記者たちを頼りにしている。

 クレムリンは彼らの活動を禁じ、「外国の代理人(スパイ)」の烙印を押し、犯罪者扱いし、揚げ句に国外に追い払った。資金源を断ち、読者や視聴者から遠ざけようとした。

 だが、彼らは再び結集し、態勢を立て直し、さらに強くなって戻ってくる。

 ロシアのジャーナリストがこれほどまでに激しく攻撃されるのは過去30年間で初めてのことであり、そのジャーナリストがクレムリンの嘘に挑み、その腐敗を暴き、戦争犯罪の証拠を明らかにし、ここまで果敢に反撃したのも初めてだ。

記者が組織するバーチャル抵抗運動

 ウラジーミル・プーチン独裁体制の下では、街頭で抗議行動を起こす余地があまりないが、独立系の記者たちはバーチャルな抵抗運動を組織し、爆発力のある記事を大統領の戦争遂行部門に投げつけ、ニュースや論説記事などを希望者に提供している。

 ロシア国外を拠点に活動しているケースがほとんどで、当人たちはこれを「オフショア・ジャーナリズム」と呼ぶ。

 調査報道を手がけるプロエクト・メディアによれば、ウクライナ侵攻以降にロシアを出たジャーナリストは少なくとも500人に上る。

 リガやトビリシ、ビリニュス、ベルリン、アムステルダムなど欧州各地に散らばった記者は、多くの読者や視聴者を抱える。ほとんどは40歳未満だ。

「我々の今の仕事は生き延びること。そして読者を窒息させないようにすることだ」。ニュースサイト「メドゥーサ」のイワン・コルパコフ編集長はそう語る。

 メドゥーサはこれまでに、ブチャでウクライナ市民が虐殺されたことや、おびただしい数の受刑者がプーチン氏の旧友が運営する傭兵集団ワグネルに無理やり加入させられていることなどを報じている。

 パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバー2人が立ち上げたサイト「メディアゾナ」は、ロシア人犠牲者の数を正確に計算しようとしている。

 動員開始以降に出された婚姻届の件数が異様に多いことに関する公開情報を分析して何人徴兵されたかを割り出すという、見事な方法も見つけている。

(召集された兵士は入隊日と同じ日に婚姻届を出すことが認められており、実際にそうするケースが多い。恋人といつ再会できるか分からないためだ)

 メディアゾナの推計では、すでに50万人が軍に招集された。クレムリンが動員すると話していた30万人を大幅に上回る数だ。