(英エコノミスト誌 2022年11月19日号)
インドネシアが存在感を取り戻した。今後10年でその重要性はさらに増す一方だ。
11月半ばの20カ国・地域首脳会議(G20サミット)はインドネシアで開催された。人々が普段見過ごしている最も重要な国だ。
この国の政治経済が前回、世界的に注目されたのは1990年代の大混乱の最中で、アジア金融危機を受けて縁故資本主義のシステムが崩壊し、32年間続いたスハルト独裁体制が倒れた時のことだ。
あれから四半世紀が経過し、インドネシアが再び重要な国になっている。
人口は世界で4番目に多く、イスラム教徒が多数派の国のなかでは最も多い。民主主義国としては世界3番目の規模を誇る。
インド洋から太平洋にかけて広がる1万以上の島々に2億7600万人もの人が住んでいることから、米国と中国の戦略的な対立に巻き込まれている。
そしてインドその他の新興国と同様に、グローバル化と西側の優位が後退しゆく新しい世界秩序に適応しようとしている。
デジタル経済やグリーンメタルで発展
次の四半世紀にインドネシアの影響力が劇的に強まる可能性がある。
一つの理由は経済だ。国内総生産(GDP)で見れば同国は世界で6番目に大きな新興国であり、GDPが1兆ドルを超える国のなかでは過去10年間に中国とインドに次ぐ高成長を遂げている。
ダイナミズムの源の一つはデジタルサービスだ。
これが統合の進んだ消費市場を生み出すことに寄与し、1億人以上の消費者が電子マネーからオンデマンド輸送のアプリに至るあらゆるサービスに計800億ドルを使っている。
経済発展を促す要因にはインドネシア特有のものもある。
バッテリーに使われるニッケルは世界全体の埋蔵量の5分の1がインドネシアに集中しており、この国は電気自動車(EV)サプライチェーンの要になっている。
西側諸国や中国、インドがEVへの投資を自国に呼び込もうと補助金を積み上げるなかで、インドネシアはチャンスを見いだした。
「グリーンメタル時代のサウジアラビア」になるのを目指すのではなく、原材料の輸出を禁止し、グローバル企業にインドネシアでの工場建設を迫る「ダウンストリーミング(川下)」政策を採用したのだ。
オーソドックスなやり方ではないが、これまでに200億ドルを超える投資を確保している。
石炭火力発電所が前倒しで閉鎖され、これらの新しい産業がクリーンな電力で操業するよう促している。