(英エコノミスト誌 2022年11月5日号)

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増長と独善に冒された巨大ハイテク企業には「物言う」取締役会と株主が効くだろう。

 米アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏は1997年に初めて書いた「株主への手紙」のなかで、今はまだ会社の創業「初日」だと記している。

 のちに付け加えた説明によれば、「2日目」は停滞を意味し、やがて取るに足らない存在になるという。

 油断や慢心を避けよというベゾス氏の熱い呼びかけは、今こそふさわしいように思える。

 シリコンバレーの5大ハイテク企業――アルファベット、アマゾン、アップル、メタ(旧フェイスブック)、マイクロソフト――は長きにわたって米国の株式市場と経済の基盤をなし、確かな成長と収益性を奇跡的に両立させてきた。

 だが、苦難の第3四半期を終えた今、5社の市場時価総額の合計は年初に比べて37%も落ち込んでいる。およそ3兆7000億ドルの価値が蒸発した格好だ。

費用とバランスシートが膨張

 巨大ハイテク企業は、巨大になったために成熟を避けられなかった。

 第3四半期の増収率は9%と、インフレ率をかろうじて上回る水準にとどまった。事業規模が大きくなればなるほど業績と景気循環との連動性が高くなった。

 パンデミックの間に見られたデジタル消費の急増は、この事実を一時的に覆い隠しただけだった。

 スマートフォンやデジタル広告、ストリーミング配信の市場浸透率は伸び悩んでいる。中核事業の成長減速を憂えた各社は互いの縄張りに手を出すようになり、競争が激しくなっている。

 その一方で、巨大ハイテク企業は「コングロマリット(複合企業)病」に脅かされている。

 増長と独善がその主な症状だ。

 例えば近年は人材採用、実験的な事業、人目は引くが無益なプロジェクト、データセンターの建設などに湯水のごとくお金を使ってきた。

 今年3月には、大手5社の費用の年間合計額が初めて1兆ドルを突破した。

 資産をあまり持たないとされるこれら企業の有形の施設や設備の価値の合計額も6000億ドルに達し、この5年間で3倍超に膨らんだ。

 そして費用とバランスシートの膨張は、5年前には60%を超えていた資本利益率を26%に押し下げた。5社のうち3社は配当も払ってくれない。