(英エコノミスト誌 2022年10月29日号)
バイデン大統領の保護主義は、米国にとっても世界にとっても高くつく。
米国の中間選挙まで2週間を切った。有権者が11月8日に投票所に向かう時、その頭の中にあるのは何より物価の急騰だろう。
足元のインフレは年率で8%をわずかに超えている。これはほぼ40年ぶりの高水準で、多くの有権者にとっては生まれてこの方経験したことがない激しい物価高騰だ。
米国のインフレは数十年にわたって落ち着いており、ほとんどの米国民はこれを無視することができた。
しかし今では、週に1度の買い物の代金が有権者の日常生活に大きな影響を及ぼし、ひいては怒りをかき立てるようになっている。
中間選挙で罰せられる恐れ
インフレを最初に上昇基調に乗せたのは、ジョー・バイデン米大統領が2021年初めに講じた巨額の景気刺激策だった。
その後、ロシアによるウクライナ侵攻が物価高騰に拍車をかけた。
バイデン氏にはやり過ぎだと認識されている施策がいくつかあり、有権者はこの物価高騰を最重要視してバイデン政権に近々罰を与えるかもしれない。
調査会社ピュー・リサーチ・センターによれば、米国民の5分の4は自分の投票行動にとって経済問題が「非常に重要」になると述べている。
また4分の3は食品や消費財の価格に「非常に強い懸念」を抱いている。
しかし、ここ2年近くのバイデノミクスがもたらした結果は、インフレ高進だけにとどまらない。
バイデノミクスは米国が直面する最大級の長期的脅威の2つに取り組んでいる。
一つは、独裁色を増している中国の台頭。もう一つは、不気味に迫り来る気候変動の危険性だ。
バイデン氏はこの1年間で、インフラ、半導体、環境にかかわる3本の画期的な法案に署名した。
ここには計1兆7000億ドルを支出する事業計画が盛り込まれており、数々の大統領令とともに本格的な産業政策を形作っている。