当初の成功から生じた驕り

 一つの問題は驕りだ。

 中国のゼロコロナ政策は数百万人の命を救うことで、目覚ましい成功としてスタートした。当初は、感染者数が少ないことは経済へのダメージが少ないことも意味した。

 この3年間、ほとんどの国民は普通の生活を送ってきた。

 国営メディアは、これは習氏と共産党が有能で慈悲深いことの証である、多数の死者を出している退廃した西側の政治家たちとは大違いだと来る日も来る日も喧伝した。

 そうした言葉は今や消え去った。習氏の政策のために、中国はますます制御しにくくなっているウイルスへの防御が弱くなっている。

 現在、国民のほぼ90%がワクチンを2度接種している。

 だが、人々が感染して回復または死亡する比率の予測に基づく本誌エコノミストのモデルによると、ウイルスが妨げられることなく拡散すれば、中国でのピーク時の感染者数は1日当たり4500万人に達する。

 ワクチンの効力がまだ残っているうえに発症者全員が治療を受けられると仮定しても、約68万人が死亡する。

 実際にはワクチンの効き目は時間とともに衰えるし、治療を受けられない人が多い。集中治療病床は41万床必要になる見通しで、これは中国の収容力のほぼ7倍に当たる。

ワクチンを疑う高齢者

 こうした犠牲者の多くは、習氏の政策がもたらす結果だ。

 重症化や死亡に至るのを避けるのに必要な3度のワクチン接種を受けた人の割合は、80歳超の国民では40%にとどまる。

 健康な80歳が新型コロナで死亡する可能性は健康な20歳のそれの100倍超であることを考えれば、これは致命的な失策だ。

 中国共産党は数千万人を数週間ぶっ続けでロックダウンすることを厭わないが、高齢者の間に広がるワクチンへの疑念に対処できていない。

 政府は当初、60歳未満にしかワクチン接種を認めなかった。

 外国製のワクチンの安全性に疑問を投げかけながら、昔からある治療法を推奨した。そして、地方政府の職員がワクチン接種を最優先で実行するための動機付けも行わなかった。