第20回中国共産党大会が開幕する3日前の10月13日午前、北京市北西部の四通橋の歩道橋に突如、一人の男が横断幕を掛けた「事件」を、まだご記憶だろう。それは次のような文句だった。
<不要核酸 要吃飯(PCR検査は要らない 飯が欲しい)
不要封控 要自由(ロックダウンは要らない 自由が欲しい)
不要謊言 要尊厳(ウソは要らない 尊厳が欲しい)
不要文革 要改革(文革は要らない 改革が欲しい)
不要領袖 要選票(偉大な指導者は要らない 選挙用紙が欲しい)
不做奴才 做公民(奴隷にならず 公民になる)
罷課罷工 罷免独裁国賊習近平(学校も仕事もボイコットし 独裁国賊の習近平を罷免しよう)>
この男を欧米メディアは、1989年の天安門事件の時に、一人で戦車の隊列の前に立ちはだかった「タンクマン」になぞらえて、「ブリッジマン」と呼んだ。男は即刻、公安によって連行されていった。
「習近平は退陣しろ! 共産党は退陣しろ!」
「ブリッジマン」は一体、何者なのか? 私はこの一帯の海淀区にある北京大学の寮に以前、一年間住んでいたことがあるので、土地勘がある。そこは名門大学が連なる大学街だ。
「ブリッジマン」が横断幕を四通橋に掛けている映像を観たが、とても学生には見えなかった。何せ「革」の字さえ誤記していた。
その時、思った。もしかしたら名門大学の学生グループが、「ブリッジマン」に金を握らせて、横断幕を掲げてもらったのではないか。
実際、あれから1カ月半を経て、早くも学生たちが「前面」に出てきた。「ブリッジマン」が掲げたセリフを唱え、加えてもっと過激なセリフも飛び出した。
「習近平下台! 共産党下台!」(習近平は退陣しろ! 共産党は退陣しろ!)
先週末、中国各地で、学生や若者たちの声がこだました。常軌を逸した習近平政権のゼロコロナ政策が、我慢ならなくなったのだ。