軍関係者とビデオ会議中のロシアのプーチン大統領(資料写真、2022年11月15日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 ロシアが昨年(2021年)夏にウクライナではなく日本攻撃を準備していたと米ニューズウィーク誌が報じ、大きな話題になっています。11月24日に英語版に掲載され、翌日の25日に日本語版に転載されました。

 以下では、この情報が信じるに値するものなのか検討するとともに、なぜ今こうした報道が行われているのかについて考えてみたいと思います。

「日本侵攻」計画の情報源は?

 情報源となったのは、ロシア連邦保安庁(FSB)内部にいる者からの告発メールです。

 FSBは、プーチン大統領がかつて所属していたKGBの後継組織であり、ウクライナ侵略にも大きな影響を与えている組織です。ロシアの国家的な決定に関して軍以上の発言力を持っており、現状ではプーチン大統領個人に次ぐ権力機構と言っても過言ではありません。そのFSB内部からの告発メールであれば、不用意に看過することはできない情報と言えます。

 ただし、このメールの存在は今年3月の時点で明らかになっており、新たな情報があったのかなど疑問も残ります。この点については、後ほど述べたいと思います。

 内容としては、昨年8月の時点で、ロシアが日本に対する局地的な武力攻撃を計画していたというものです。北方領土に近い北海道東部への攻撃が念頭にあったものだと思われます。