(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
大国に陸続きで隣接する小国は気が休まらない。中国の周辺では朝鮮とベトナムがそれに該当する。なんと言っても日本と中国の間には海があり、ちょっとやそっとのことでは攻めて来ない。日本にはそんな安心感がある。
歴史を振り返るとき、朝鮮とベトナムの中国との接し方は大きく異なっていた。朝鮮は常に中国に従う道を選んだ。だが、ベトナムは面従腹背を繰り返して、完全に中国に従うことはなかった。
そんなベトナムは細心の注意を払って中国を見つめている。
いち早く駆けつけて祝意を述べた書記長
10月25日にベトナムと中国の双方は、10月31日からベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長が中国を訪問すると発表した。発表は中国共産党大会が終わってから3日目であり、訪中はその6日後である。電光石火の訪中と言ってよい。書記長はベトナム共産党で序列第1位、その力は2位のフック国家主席や3位のチン首相を上回る。
習近平が慣例を破って3期目に突入しただけでも評判が悪いのに、蓋を開けたら政治局常務委員を側近で固めた。下馬評が高かった李克強や汪洋、胡春華は完全に排除された。そんな習近平の独裁に世界は驚くとともに、これまでにも増して警戒心を抱くようになった。