文=松原孝臣 写真=積紫乃
親交のあるアーティストからコメントも
今年5月の第1弾に続き、9月23日に放送された「こだわりセットリスト特別編・羽生結弦選手特集」。
番組の半ばにさしかかる頃合いにアナウンサー藤原菜々花が選んだのは『オペラ座の怪人』。
「2014年の中国杯の6分間練習で衝突事故が起きたとき、頭に包帯を巻いて立っているのもやっとなような状態で、もう1回リンクに出て、滑り切ったプログラムです。あきらめない姿勢とすごい覚悟を持った人なんだなとあらためて認識したプログラムでもあるので羽生選手を語る上で欠かせないと思いました」
その後、2つの『ロミオとジュリエット』を並べた。2011-2012シーズンのフリーで用いられ2012年のフランス・ニースでの世界選手権で銅メダルを獲得したもの、2013-2014シーズンのフリーであり2014年のソチオリンピックで金メダルを手にしたもの、2つのバージョンだ。
「それぞれにそれぞれの時代の良さがあるんですけど、羽生選手がこのように大人になったというか、進化がすごく分かる、見えたプログラムだなと思いました」
続いたのは『夢に描くキセキ』(パンダライオン)、『花になれ』(指田フミヤ)。
「音楽という絆で羽生選手と結ばれて、しかも昔から羽生選手と親交がある、ずっと見守り続けていらっしゃるお二人からどうしてもコメントをいただきたいなと思って今回オファーしました。快くお二人とも引き受けてくださって。ソチオリンピックのときに応援歌を作って贈ったのがパンダライオンさんだったので、ソチの金メダルの1つの力になったアーティストとしてパンダライオンのKIMさんのコメントを紹介させていただきました。
指田さんにも未来に向かう羽生選手にきっと励みになる、力になる温かいコメントをいただいて。お二人のコメントの後に未来にどんどんつなげていきたいなと思ったので『レゾン』を入れたんですね」
続く『レゾン』は「ファンタジー・オン・アイス」の神戸・静岡公演で披露された。
「これは現役の羽生選手が最後に滑ったプログラムで、孤独が1つのテーマと羽生選手がおっしゃっていて、きっと自分自身と重ねていたのかな、と。思えば、今年のファンタジー・オン・アイスの羽生選手って別人のようでまとうオーラも全然違うし、あの演技にもプロに転向する決意が表れていたんだなと思いました。未来に向けて現役最後に滑った『レゾン』は、欠かせない1曲だと思いました」
プログラム曲の最後を飾ったのは『春よ、来い』。
「以前、記事を読んだときに、コロナ下にあって1人で練習していて、やめたくなった時期があるというお話をされていたと知りました。もう1回スケートに向き合いたいと思えた曲が『春よ、来い』とおっしゃっていて、ある意味、1人で孤独を味わっているときに『春よ、来い』を滑ろうと思っていなかったら、もしかしたら未来につながってないかもしれないというか。大切な未来につながった曲だなと思ったので、最後に持ってきました」