富士山と富士川(写真:アフロ)

(柳原三佳・ノンフィクション作家)

 10月11日から新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、外国人の個人旅行やビザなし渡航が解禁されました。国内でもさまざまな支援策が打ち出されたことから、この秋には旅行のプランを立てているという方も多いことでしょう。

 新型コロナの影響で中止や延期を余儀なくされていたお祭りも、今年は3年ぶりに開催を決めたところが多く、全国各地で盛り上がりを見せているようです。

富士川の堤防で行われる勇壮な火祭り

 本連載の主人公「開成をつくった男・佐野鼎(かなえ)」が今から193年前に産声を上げた富士市でも、今年10月1日(土)、3年ぶりに「かりがね祭り」が開催されました。

(参考)日本観光振興協会HP<かりがね祭り>
https://www.nihon-kankou.or.jp/shizuoka/222101/detail/22210ba2212015247

 富士川の下流に位置する「雁堤(かりがねづつみ)」、この堤防を会場に、毎年開催されてきた祭りのハイライトは、十数メートルの高さにセットされた「ジョウゴ」(「蜂の巣」とも言う)と呼ばれる大きな籠をめがけ、地上から火のついた薪を回しながら投げ入れる「投げ松明(たいまつ)」です。

地上高く設置された籠がジョウゴ(筆者撮影)

 松明がうまく籠に入って火が着けば、ジョウゴは花火が破裂するような音と共に、暗闇を明るく照らしながらたちまち燃え上がり、最後にはさらに大きな炎の塊となって高い場所から一気に地面に落下するのです。その瞬間、会場は大きな歓声と熱気に包まれます。

ジョウゴに向かって下から火のついた松明が次々と投げ上げられる(筆者撮影)