金日成の邸宅跡を高級住宅地に変えたワケ

 5号宅は護衛司令部本部と直結しており、その周辺は護衛司令部関連部署の建物で完全に取り囲まれていた。わずか500メートル内に、中央党庁舎があるだけでなく、平壌駐在ロシア大使館とも近接していた。

 したがって、ここは護衛司令部関係者以外には、誰も近付くことができない接近禁止区域であった。

 このような場所に、800世帯規模の超豪華型複層住宅団地が建設され、瓊楼洞という新しい洞が生まれたのである。

 北朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、2021年6月29日、金正恩氏の「為民献身」を宣伝する記事として、800世帯規模の「普通江川沿いテラス型住宅区」が金日成主席の私邸跡地に建てられると明らかにした。

 金正恩氏も、何度も建設現場を訪れては、「ここには、首領様(金日成)の邸宅があった。昔は、その邸宅を『5号宅』と呼んだ。誰もが5号宅のことを振り返ると、一国の主席の邸宅としては、あまりにも地味だったことに驚きを隠せないだろう」と語った。

「初めはここに革命史跡館を建てて、人民に首領様の庶民的な風貌を見せようと考えた。それができなかったのはちょっと惜しいが、5号宅を撤去し、そこに、現代的なテラス式住宅を建てることは、人民のためになることだと、首領様もお喜びになるはずだ。私たちを助けるために、わざわざこのような素晴らしい場所を残しておいてくれたという思いがする」とまで言った。

 だが、これに対して、保安部の幹部は「それは北朝鮮政権が金正恩氏の業績と『愛民精神』を紹介するための宣伝用だ。実際は5号宅跡地に、800世帯規模の超豪華テラス型複層住宅団地を建てたのは、中央党と護衛司令部の利権談合のためである」と述べた。

 金日成、金正日、金正恩一家の警護を担当している護衛司令部と、北朝鮮権力の核心機関である中央党がお互いに談合して、平壌市内の最もよい景勝地に、自分たちが引退後に住むことができる退職用超豪華テラス式住宅団地を造成したということだ。