高齢の親が発し始めた「SOS」

篠原:生活援護課の相談支援員に聞いた話ですが、自分を見えないようにするために黒く塗っていたようです。一緒に暮らす両親ともほとんど会話せず、両親が寝た後に冷蔵庫から勝手に食事を取って食べるという生活を20年、続けていたわけです。

 その後、この方は父親が病気になり、それがきっかけとなって市役所に直接相談に来るようになりました。

──「8050」問題ですね。

篠原:親が若いうちは自宅にひきこもる子どもの面倒を見ることができましたが、70代、80代と年を取るにつれて、自分にもしものことがあれば我が子はどうなるのかと案じる親が増えています。

 先ほどの顔を黒く塗っていた男性も、子どもの将来を案じた両親が生活援護課に相談に来たことで、この男性の存在が可視化されました。

 具体的な支援はしていなくても、困窮者の存在を把握し、緩やかにつながっておくということはとても重要です。先の黒塗りの男性のように、SOSを受け止めることができますから。

──生活援護課はどのような体制で支援しているのでしょうか。

篠原: 座間市役所の生活援護課は、生活保護の利用者を担当する生活援護係と、生活保護に至っていないものの生活に困窮している人たちを支援する自立サポート担当の2つに分かれています。

 生活援護係は生活保護申請の受け付けをはじめ、生活保護費の計算や支給、保護世帯の現況確認などを担当しています。

 一方の自立サポート担当は相談に来る人の話を聞き、その人が自立するために必要な手を差し伸べることが仕事です。後述しますが、地域のNPOなど「チーム座間」の専門家の協力の下、相談者の生活を建て直すために尽力する。

──生活保護制度があるのに、なぜ自立サポート担当のような制度ができたのでしょうか。