最大野党も原発の稼働延長を主張

 例えば、タブロイド紙ビルトの日曜版が世論調査会社INSAに委託した調査によれば、有権者の7割が稼働延長に賛成すると同時に、54%が電力の安定供給のために今後も継続運用すべきであると回答している。

 こうした動きに機敏に反応しているのが、最大野党であるキリスト教民主同盟(CDU)と、その姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)からなる保守連合(Union)だ。フリードリヒ・メルツCDU党首とマルクス・ゼーダーCSU党首は8月頭にバイエルン州にある原発を訪問するなど、稼働延長支持のアピールに努めている。

 ドイツでは9月までに今後の原発の稼働に関する方針が決まる予定だが、Unionは稼働延長の立場を鮮明にしている。両党の党首はあくまでそれが時限的な措置であることを強調しつつ、バイエルン州にある原発2基の稼働延長は不可欠で、技術的な理由から9月までにその決断を下すべきだとショルツ首相に対して圧力をかけている。

 もともと2022年までの脱原発目標を掲げるにあたり、CDU出身のアンゲラ・メルケル元首相が大きな役割を果たしたことはよく知られている。Union、特にCDUのメルツ党首は、原発の稼働延長を時限的な措置と強調することで脱原発の民意に一定の配慮をしながらも、脱メルケル路線を鮮明にして党勢の回復を図ろうとしているのだろう。

廃止されたドイツのグライフスヴァルト原子力発電所。脱原発が進んでいたが……(写真:picture alliance/アフロ)