遠くに見えるのが「サハリン-2」のLNG工場。手前は日露戦争時の日本軍上陸記念碑(横倒しにされている、2018年9月、筆者撮影)
プロローグ
世界の耳目を驚かすプーチン大統領
- プロローグ 世界の耳目を驚かすプーチン大統領
- 今、何が起こっているのか、問題の本質は?
- 露大統領令416号と露政令1369号
- 大いなる幻想
- 欧米による対露経済制裁措置は効果大
- 露ウラル原油/油価推移 (2021年1月~22年7月)
- ガス価格動静(1992年~22年7月)
- ノルト・ストリーム①用ガスタービン修理問題
- ノルト・ストリーム②(NS②)完工
- ソ連邦崩壊の底流は長期油価低迷
- ロシア経済は油価依存型経済構造
- 2022年ロシア国家予算案概観と国民福祉基金資産残高
- ロシアから欧州向け天然ガス供給路
- PSA (生産物分与契約)とは?
- 間違いだらけの『選択』記事
- エピローグ 日本向けLNG供給契約の行方は?
今年2022年6月、ロシアでは世界の耳目を驚かすビジネス関連事件が2件、唐突に続発しました。
ロシア(露)からバルト海経由ドイツ向け天然ガス海底パイプライン(以後、P/L)輸送量が唐突に削減されました。
理由は、露ガスプロムが修理に出した「ノルト・ストリーム①(以後、NS①)」用ガスタービンが戻ってこないというロシア側説明です。
露V.プーチン大統領(69歳)は6月30日、大統領令416号に署名。サハリン島北東部沖合のオホーツク海にて原油・天然ガスを探鉱・開発・生産している「サハリン-2プロジェクト」に対し、事業会社「サハリン・エナジー社」の権益を、今後新規に設立されるロシア法人に無償譲渡させる内容です。
この大統領令により、サハリンから日本向けLNG(液化天然ガス)供給契約に黄信号が灯りました。
上記大統領令を受け、ロシア政府は8月2日、政令1369号を発令。この新規ロシア法人は、サハリン州の州都ユージノ・サハリンスク(旧豊原)に設立されることになると発表されました。
ただし、具体的にいつ設立されるのかは現時点では不明です。
世界の耳目を驚かせた、東西2つの事件の本質は同根です。
この点を指摘している日系マスコミは皆無で、とてもおかしな解説記事も流れています。
雑誌『選択』(2022年8月号)「サハリン2 謀略の真相」のように、間違いだらけの記事も流れています。
本稿では、ロシアによるこの2つの暴挙を概観することにより、≪問題の本質は何か≫を考察したいと思います。