欧米では感染急拡大でワクチン接種を求めて医療機関には長蛇の列(7月30日ロンドンで、写真:ロイター/アフロ)

 今回の稿でもグローバル疫学対策の観点から「新型コロナ」と「サル痘」の共通項を考えてみます。

 本稿執筆時点で2例が「確認」(https://www.asahi.com/articles/ASQ7X4RLYQ7XUTFL00T.html)されており、各々別の感染ルートであったとされます。

 しかし、報道は軒並み、「動物からの感染が主」「人から人への感染は稀とされるが」「性交渉が関係?」など、要領を得ません。

 情報を発信する側も、それを取材するマスコミも、中身を分からず文字を並べるからこういうことになります。

 それでは報道としての意味がありまませんし、まともな防疫にも役立ちません。ということで、東京大学ゲノムAI生命倫理研究コアのスタンダードに則り、基礎から確認していきましょう。

 第1は、その「検査法」です。

 新しい病気ですから、本当に「ソレだ」と確認するには方法が必要です。共通の方法として「PCR」検査が挙げられます。

 サル痘を「この患者は、まさしくサル痘である」と診断するには、適切なPCR検査によって、その病原体が「サル痘ウイルス」であることを確認する必要があります。

サル痘の「2重膜構造」を知る

 サル痘の病原体は「天然痘ウイルス」と親戚である「サル痘ウイルス」で「オルソ・ポックスウイルス」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html)と分類される「DNAウイルス」であり、新型コロナウイルスのような「RNAウイルス」とは異なります。

 新型コロナは、直径約100ナノメートル、つまり0.1ミクロンほどのトゲトゲの生えた形をしています。

 自分自身のRNAを私たちの細胞内に注入、細胞内の再生産工場を占拠して爆発的に部品を増加させたのち、私たちの細胞の材料を新たな外皮として出芽して増えます。

 これに対して、ポックスウイルスは1辺が300ナノメートル程度、つまりコロナより長さで3倍、体積だとその3乗ですから数十倍の大きさになります。

 形は巨大な煉瓦状、ブロック型のウイルスで、感染した私たちの細胞内でまず「細胞内成熟ウイルス」が増えていきます。