(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
安倍元首相が暗殺された。奈良県警による会見で、鬼塚友章本部長が「警護警備に関する問題があったことは否定できない」と述べた通り、当日の警護は素人目に見ても抜け穴だらけだった。警護体制が徹底されていれば、安倍元首相が命を落とすことはなかったのではないか。
安倍元首相の背後には2人の警護員がいたという。そのため、警護員の配置はそれほど問題がなかった。問題だったのは、山上徹也容疑者が接近してきたことに誰も気付かなかったことだ。
1発目の銃撃で周囲にいた人は身をすくめてしまい、2発目の銃撃に備えることができなかった。防弾盾(バッグ型の軽量盾)すら開かれていない。それどころか、慌てた警護員に押し倒された女性が車道に倒され、もう少しで車にひかれるところだった。
犯行当時の動画を見る限り、冷静を保っていたのは演説中の安倍元首相だけだ。彼は亡くなる直前まで、一流政治家の姿を国民に見せてくれたように思う。
「最初は爆弾での事件も計画していた。安倍元総理を付け回して岡山に行った」と容疑者が取り調べで証言した通り、彼は前々から暗殺を企てていた。岡山で暗殺を実行しなかったのは、警護体制が容疑者の想定以上だったからだろう。奈良県警の警護体制には不備があったと言わざるを得ない。
安倍元首相の暗殺事件によって、韓国では朴槿恵(パク・クネ)元大統領が被害にあった「焼酎瓶テロ」の時の警備体制が改めて注目されるようになった。焼酎瓶テロとは、恩赦後、民衆の前で挨拶する朴元大統領に向かって男が焼酎瓶を投げた事件のことだ。
この時、女性警護員が両手を上げて駆けつけ、瓶が朴元大統領にあたるのを防いだ。他の警護員たちは一糸乱れぬ動きで朴元大統領を取り囲み、その中の一部の警護員は防弾盾を広げて使用している。焼酎瓶は朴元大統領の約3メートル手前に落下、破片は1メートル手前まで飛んだ。
韓国メディアは、安倍元首相の暗殺事件と朴元大統領のテロ事件を次のように報道した。