本書についてはジャパノロジーの大御所ジェラルド・カーティス・コロンビア大学名誉教授やエズラ・ヴォ―ゲル・ハーバード大学名誉教授(2020年12月20日逝去)が絶賛している。

 安倍氏が暗殺されたとの報に接した元国務省高官の一人A氏は筆者に次のようなメールを送ってきた。

「安倍暗殺は、われわれ日本を知る外交官にとっては、ショック、戦慄、悲しみという3つの表現以外には見つからない」

「安倍氏の首相在任中から現在に至る日本の内政外交を振り返ってみると、同氏ほど重要な首相(Consequential Prime Minister)はほかにいない」

「そのバイタリティから90歳まで生き続けて日本の政治をリードしていくものと思っていた」

「通常、米国人一般には日本の首相はあまり関心がない。メディアも日本の首相について注意することはまれだった」

「だがその中で例外的な首相は3人いる。中曽根康弘、小泉純一郎、そして安倍晋三の3氏だ」

「3人はともにビビッドなパーソナリティを有し、パートナーとなった大統領たちを惹きつけた」

「特に安倍氏は、毀誉褒貶が激しく、朝令暮改を繰り返すトランプ氏との個人的関係を見事に築き上げた」

「米国人の中には忌み嫌った人もいるトランプ氏とこうした関係を持とうとした安倍氏のモチベーションは何か」

「それは一にも二にも日本の国益を守ることだった。トランプ氏もその安倍氏の愛国心に痺れたはずだ」

「一切の妥協を嫌ったトランプ氏が安倍氏には譲歩した。その結果、日米は緊張関係を和らげ、同盟関係を強化した」