(福島 香織:ジャーナリスト)
2017年1月に、香港・セントラルの五つ星ホテル、フォーシーズンズホテルから大富豪の蕭(肖)建華(カナダ国籍)が連れ去られた。蕭建華はこの5年半の間、行方不明になっていたが、実は中国国内で起訴されていた。
7月4日、蕭建華を裁く裁判がどうやら上海で開かれたらしい。北京のカナダ大使館が確認するも、起訴事実や裁判が行われた場所など詳細は知らされておらず、公聴を申し込むも拒否されたという。
蕭建華の「失踪」は、当時から北京当局による政治目的の拉致であることがほぼ確定と報じられていたが、公式にはなんら発表されていない。6月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が特ダネとして、上海検察当局が蕭建華を「公衆の預金の違法吸収」の罪で起訴しており、6月中に蕭建華の裁判が開かれるらしいと報じていた。
では、なぜ今のタイミングで蕭建華の裁判が行われることになったのだろうか。これは夏の北戴河会議、そしてその後に予定されている今年最大の政治イベントである第20回党大会(20大)に向けた権力闘争と、どのような関係があるのだろうか。
党中央指導部との癒着で急成長
まず蕭建華失踪事件について簡単におさらいしておこう。