韓国の前大統領・文在寅氏(左)と今年3月の大統領選に「共に民主党」の候補として出馬した李在明氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 6月1日に行われた韓国の統一地方選挙で、与党の「国民の力」が国会多数党の「共に民主党」に完勝を収めた。これをきっかけに、共に民主党では党分裂の可能性まで帯びた内ゲバが始まった。

 国民の力は17個の広域団体長選挙で12対5、計226の基礎自治体(区・市・郡)の首長選挙では145対63(無所属1)で完勝し、保守政権としては12年ぶりに地方政権を席巻した。国会を掌握した共に民主党と対立している尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権としては、これで国民の支持に裏打ちされた改革推進の原動力を確保したことになるが、共に民主党では敗北の責任を巡り激しい内紛が始まった。

大統領選直後は「敗北」を潔く認めていたのに

 尹大統領の就任から3週間後に行われた今回の選挙は、最初から「与党優勢」との予測が多かった。それが蓋を開けてみれば、予想をはるかに上回る、共に民主党の歴史的な惨敗。正直、ここまでの大差を予測する者は少なかった。

 韓国メディアでは、共に民主党の惨敗の原因は、0.7%差の大統領選挙の敗北を認められず、新たに発足した政権の足を引っ張りつづけてきた結果だ、との分析が多くなされている。

 大統領選挙翌日の3月10日、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は「0.7%」という僅差にも再開票などを要求せず、潔く選挙結果を受け入れた。この李氏の行動はメディアと国民から喝采を受け、支持者の間では「負けはしたがよく戦った」と評価された。

 しかし、共に民主党は1週間も経たないうちに突然その態度を豹変させ、大統領選挙の結果を認めないような言動を繰り返すようになった。急造された「検捜完剥法案」の国会立法を強行したのがその第一歩だ。