河南省鄭州市の人民銀行鄭州支店前で預金引き出し停止に抗議する人たち(ビデオ画像、2022年7月10日、提供:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国・河南省鄭州市の人民銀行鄭州支店前でおよそ3000人規模のデモ隊と、それ以上の警官隊や「白シャツの男」の集団が衝突する「暴動」事件が7月10日に発生した。少なくとも1人の男性が失明する大けがを負い、老人や妊婦、子供までが巻き込まれる大事件として、海外メディアも報じた。

 興味深いのは、このデモ隊のスローガンの中に「李克強よ!河南を捜査せよ!」という、李克強に救いを求める声があったことだった。

 一体、この「暴動」はなぜ起きたのか。そしてデモ隊はどうして李克強に救いを求めたのか。

預金と行動の自由を奪われた

 このデモは、4月中旬から続く、河南省や安徽省の村鎮銀行(旧農民信用社)の預金消失事件の被害者(預金者たち)によるものだった。

 4月18日ごろから、河南省の複数の村鎮銀行の口座から預金を引き出せないというケースが続出した。

 さらに、預金者が銀行の窓口に行こうとしたら、スマートフォンにダウンロードした健康コードアプリが赤色や黄色になるという不思議な現象が報告された。健康コードアプリとは、新型コロナ感染拡大を予防するためにダウンロードを義務付けられているもので、感染リスクに応じてコードの色が赤、黄、緑と色分けされ、PCR検査で陽性が出たり、居住地域に陽性者が出た時に、コードが赤や黄色に変わり、移動制限がかけられる。コードが赤や黄色なのに外に出たことが発覚すると、強制隔離措置されても文句は言えない。だが、PCR検査が陰性で、地域にも陽性者が出た形跡がないのに、コードが赤や黄色に変わったり、河南省の特定の地域に足を踏み入れると急にコードが赤や黄色に変わったりする怪現象が起きた。