(福島 香織:ジャーナリスト)
中国・河南省鄭州市の人民銀行鄭州支店前でおよそ3000人規模のデモ隊と、それ以上の警官隊や「白シャツの男」の集団が衝突する「暴動」事件が7月10日に発生した。少なくとも1人の男性が失明する大けがを負い、老人や妊婦、子供までが巻き込まれる大事件として、海外メディアも報じた。
興味深いのは、このデモ隊のスローガンの中に「李克強よ!河南を捜査せよ!」という、李克強に救いを求める声があったことだった。
一体、この「暴動」はなぜ起きたのか。そしてデモ隊はどうして李克強に救いを求めたのか。
預金と行動の自由を奪われた
このデモは、4月中旬から続く、河南省や安徽省の村鎮銀行(旧農民信用社)の預金消失事件の被害者(預金者たち)によるものだった。
4月18日ごろから、河南省の複数の村鎮銀行の口座から預金を引き出せないというケースが続出した。
さらに、預金者が銀行の窓口に行こうとしたら、スマートフォンにダウンロードした健康コードアプリが赤色や黄色になるという不思議な現象が報告された。健康コードアプリとは、新型コロナ感染拡大を予防するためにダウンロードを義務付けられているもので、感染リスクに応じてコードの色が赤、黄、緑と色分けされ、PCR検査で陽性が出たり、居住地域に陽性者が出た時に、コードが赤や黄色に変わり、移動制限がかけられる。コードが赤や黄色なのに外に出たことが発覚すると、強制隔離措置されても文句は言えない。だが、PCR検査が陰性で、地域にも陽性者が出た形跡がないのに、コードが赤や黄色に変わったり、河南省の特定の地域に足を踏み入れると急にコードが赤や黄色に変わったりする怪現象が起きた。