(水野 亮:米Teruko Weinbergエグゼクティブリサーチャー)
販売店の店員は「このモデルならありますよ」
米国の自動車販売店ではなかなか欲しい新車が見つからない状況が続いている。
半導体をはじめとする部品不足の問題が世界の自動車産業で見られるが、米国も例外ではない。自動車メーカーは必要な部品を調達できず、工場の稼働停止や生産シフトの削減を余儀なくされている。
一方、2020年の新型コロナウイルス感染症によるロックダウン措置期間に溜まった、新車の繰り越し需要は、行動制限解除に伴い爆発した。
すると販売の急増に生産が追い付かず、需給バランスは崩れた。これが全米の自動車販売店での在庫不足を招いている。
筆者は新車の購入のためロサンゼルスのダウンタウンにある独フォルクスワーゲンのカーディーラーに足を運んだ。営業担当に新車を探していると伝えると、彼の返事は「どのモデルをお求めですか」ではなく、「このモデルならありますよ」であった。
車種やグレード、ボディの色、オプション装備など、顧客の注文を受けて生産し、納車する日本とは異なり、米国ではカーディーラーの駐車場に並んでいる在庫の車を顧客が選んで購入する。
筆者は2時間ほど営業担当から説明を受けたが、欲しい車が見つからない。ボディの色もまったく選べない。彼は汗をかきながら代替案を提示してくれるものの、なかなか決心できない。
在庫が少ないだけではない。値段も事前に調べた情報よりもかなり高くなっていた。