6月29日、英ロイター通信がニューデリー発で、「インドのセメント大手、ロシアから石炭を輸入 人民元で決済」と題した興味深い記事を配信した。その要旨は、以下の通りだ。

<インドのセメント最大手ウルトラテック・セメントがロシアから石炭を輸入し、人民元で決済していることがロイターが入手したインドの税関書類で明らかになった。

 それによると、ウルトラテックはロシアの石炭大手SUEKからの15万7000トンを、極東のワニノ港から出荷した。5日付の請求書では代金が1億7265万2900元(2581万ドル)となっている。2人の関係者筋はSUEKのドバイ部門が取引を手配したと明らかにした。他の企業も元建てでロシア産の石炭を発注したという。

 元による決済が増えれば、西側諸国による対ロシア制裁の効果が弱まる可能性がある。また元の国際化を目指す中国の取り組みに追い風となる。

 シンガポールの為替トレーダーは「この動きは重要だ。この25年間、インド企業が国際貿易の決済に元を用いたという話は聞いたことがない。ドルを回避している」と話した。インド財務省の元幹部は「ルピー、人民元、ルーブルのルートが有利と分かれば、企業は切り替えようとする。こうした取引は今後も行われる可能性が高い」との見方を示した>

 中国、ロシア、インドの「人民元三角関係時代」の開始である。

北京五輪開会式出席でプーチンと習近平の関係強化

 布石はあった。まず中国―ロシア関係の変化である。

 2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始は、ウラジーミル・プーチン大統領を「唯一無二の盟友」と公言する中国の習近平主席にも、衝撃を与えた。それは、2020年1月の新型コロナウイルスのパンデミックにも相当する衝撃だった。このまま「プーチンとの盟友」の看板を掲げ続けたら、中国はロシアもろとも吹っ飛んでしまうとの悲観論も、中南海では飛び交った。