宮古海峡を通過する中国海軍空母「遼寧」(資料写真)

(北村 淳:軍事社会学者)

 バイデン大統領の東アジア諸国訪問ならびに日米印豪「クアッド」首脳会合の開催を前にして、中国海軍がアメリカを威圧するように「遼寧」空母艦隊を沖縄南方の公海上に展開し、空母艦載機発艦着艦訓練を含む艦隊訓練を比較的長期にわたって実施した。

 中国海軍は空母艦載機をまさに「派手に飛ばしまくり」、2週間にわたる訓練期間中に300回以上の発艦着艦が繰り返された。

牽制行動を全く実施できなかった米海軍

 日本による真珠湾攻撃によって空母中心主義に転換したアメリカ海軍は、80年以上にわたる空母艦隊運用経験を誇る。それに対して中国海軍は、空母艦隊はおろか航空母艦そのものの運用経験もアメリカ海軍に比べれば赤子のようなものである。そのためアメリカでは軍首脳も含めて中国海軍を見くびっている傾向が強い。

 しかしながら、中国海軍の現状を継続的に分析しているアメリカ海軍情報局やシンクタンクの専門家たちは、「けっして中国海軍をみくびってはならない」と警鐘を鳴らし続けている。