地対艦ミサイル「ネプチューン」の発射車両

(北村 淳:軍事社会学者)

 4月14日、ウクライナ南部の要衝オデッサ南方沖およそ100kmの黒海上で、ウクライナ軍が発射した地対艦ミサイルR-360「ネプチューン」2発がロシア海軍黒海艦隊旗艦の巡洋艦「モスクワ」に着弾した。ロシア海軍は、火災を起こしたモスクワを曳航してセヴァストポリ軍港に撤収させようとしたが、4月15日、モスクワは転覆し沈没した。

火災を起こしている巡洋艦「モスクワ」(奥の軍艦)

 米海軍関係者たちは、地対艦ミサイルによるモスクワ沈没から引き出せる教訓に強い関心を抱いている。来るべき中国との戦いでは、超強力な中国対艦ミサイルの攻撃を覚悟しなければならないからだ。

「スターク」被弾の経験

 イラン・イラク戦争(1980~1988年)に際して、アメリカ(ロナルド・レーガン政権)はイラク(サダム・フセイン政権)側に立って参戦していた。

 1987年5月17日、ペルシア湾を警戒中の米海軍フリゲート「スターク」は、戦闘モードを維持しつつ急接近して来るイラク空軍ミラージュ戦闘機を捕捉した。10分後、スタークは無線で、友軍機であるミラージュ戦闘機に警告した。だが、ミラージュ戦闘機は対艦ミサイル「エグゾセ」2発をスタークめがけて連射した。イラク軍戦闘機はスタークをイラン側タンカーと誤認して攻撃したのであった。