世界的に珍しいお酒を薄めて飲む習慣
──最近は海外でも焼酎が注目されているという話ですが、お酒を薄めて飲む習慣がない海外で焼酎文化は受け入れられるのでしょうか。
鮫島:確かに、海外ではお酒を割る文化はありません。割るための水が良質である必要がありますが、そもそも低濃度で飲む文化自体がほとんどないのです。
海外ではウイスキーやブランデーをストレートで飲むため、お酒を水で割ることを嫌う外国に、どのように焼酎を浸透させるかは大きな課題です。そもそも焼酎自体が知られておらず、まずは認知を高める必要があります。

また蒸留酒は海外では、アルコール度数が基本的に高く、健康に良いとは言いがたいため、酒税が高く設定されています。かつて、焼酎の酒税はそれほど高くなかったのですが、国際酒税紛争の結果、現在では日本酒の倍近くかかっています。酒税も焼酎の輸出をより困難にしている原因の一つとも言えるでしょう。
そのような状況下で、近年、焼酎は東洋の摩訶不思議な酒というイメージで注目を浴びつつあります。
焼酎は麹、いわゆるカビを使っているのに、なぜこれほど良い香りがするのか、一度の蒸留で高濃度の酒を造ることができるのかと、とても不思議に思われているようです。WSET(国際的なお酒の教育機関)の教科書にも焼酎は取り上げられており、少しずつ海外でも知られ始めてきています。
焼酎は時代を先取りしたお酒だと思っています。焼酎は、蒸留酒の中では唯一食中酒として飲むことができ、健康にも良いという特徴があります。酔い覚めがよく、悪酔いをしない、血糖値も上げない。そして、アルコールを多飲することによる害は世界中で知られていますが、焼酎は水やお湯で割るため低濃度で飲むことができます。
私は、焼酎のもつ独自性、オリジナリティは世界の蒸留酒が辿るべき道を示しているのではないかと考えています。焼酎を普及させるには、日本の酒文化や日本食、健康と酒との関係性への理解が必要となります。
体に良い飲み方とともに焼酎の良さを知ってもらうことが大事なのではないでしょうか。日本文化の広がりとともに、多くの人に焼酎を楽しんでもらうことを期待しています。(構成:水上 茜)