待ち時間に司馬遼太郎を読破したGさん

 Gさんの勤務は週に2日、19時~24時だった。Gさんがシフトに入る日の流れを見てみよう。

 まず、本業の仕事を18時頃に終える。Gさんは家族と一緒に夕食を取り、開始時間の19時になると、店長に「時間になったので、入ります!」という電話をかける。すると、「○○というホテルから、(女性が)〇時〇分に出てくるから」と指示される。

「私が入る時間はすでに女性がホテルに出張しているので、家から直接ホテルに迎えにいくところからスタートします。事務所に出勤したのは初回だけで、その後は一度も行っていません。女性の自宅まで迎えに行くことも、ほとんどありませんでした」

 家族には、「IT系の仕事の手伝いにちょっと行ってくる」みたいな感じで出かけていた。服装の指定は特になく、ポロシャツやトレーナーなど普段着のまま。向かうのはたいていホテル街だ。

「指示された時間の1分前に、ホテル入口の人影が見えるようなところに車を停め、出てきたと思ったらスッと近づきます。女性は私の車種を事前に知らされているので、声をかけなくても勝手に後部座席に乗ってくる。サービスの延長がない限り、決まった時間に出てきますし、延長の場合は指定時間の10分くらい前に店長から変更の連絡が入ります」

 Gさんの車は、グレーのプリウス。環境にやさしい車に女性を乗せると、そのまま次のホテルへ送り届ける。だいたい1時間に1~2名の女性を運び、24時の終業まで、1日に4~5名の女性を乗せていた。

「移動距離は基本的に半径5キロ圏内で、営業範囲の短さもこの店を選んだ理由でした。移動時間は長くても30分、ほとんどは10分くらいで目的地に着きます。だから勤務中は待機している時間の方が長かった」

 車を停めて待っていると、デリヘル送迎の同業者はすぐにわかる。ドライバーは60代くらいの高齢者もいるし、20~30代の若い人もいる。Gさんと同じような中年もチラホラ見かけた。

 Gさんは待機中、ほとんど読書していたという。読んだ本は司馬遼太郎が多く、『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』を読破したそうだ。デリヘル送迎の車内で司馬遼太郎、一周回って「渋い」と言うべきか。