「ウチは結婚当時から妻が給料を管理していて、お小遣いは1円ももらっていません。自由に使えるお金が欲しいので、副業は若い頃からやっています。これまで主にやってきたのは、デイトレ(デイトレード)と物販です」
Gさんは仕事の合間に、デイトレで株を取引したり、海外から中古のレコードを購入し、それを売ったりすることを副業にしてきた。中古レコードはGさんの趣味で、様々な国で発売されたビートルズなどのレコードを国内で転売する。いずれもネット上で完結する仕事で、月に5~10万円ほど副収入を得ていた。
「ここ10年くらいは円安の影響で、レコードの仕入れにお金がかかり、稼ぐことが難しくなってきました。デイトレだけだと副収入が安定しないので、月3~4万円稼げる副業がないかと考えた時に、デリヘルの送迎なら楽かなと思ったんです。普段会わないような人に会ってみたいという気持ちもありました」
デリヘルの初出勤で目にしたもの
一応説明すると、デリヘルとは「デリバリーヘルス」の略で、性的サービスを行う女性を、ホテルや男性の自宅に「デリバリー」する風俗業態だ。女性送迎のためのドライバーが、デリヘルには欠かせない。
ちなみに、Gさん自身はデリヘルを利用したことは一度もないそうだ。
Gさんの住む県の最低賃金は800円台後半(2022年5月現在)、デリヘル送迎は1000~1300円ほどの時給で募集が出ている。Gさんは「デリヘル 送迎」で検索し、ナイトワーク専用のアルバイトサイトから「1日数時間からOK」「時給1100円」というような求人に3件ほど応募してみた。
メールで返信のあった1社にGさんが電話をかけてみると、相手は営業マンのような、ごく普通の応対だったという。
「『いつから来られますか?』と、すぐにでも働いて欲しそうな勢いでした。あとは週に何日働けるか、時間帯はいつがいいかを聞かれたくらいです。本業の話はまったく聞かれませんでしたし、説明もしませんでした」
電話から2日後に初出勤。指定された場所は、繁華街に近い5階建ての普通のマンションの一室で、事務所と女性の待機所を兼ねている場所だった。
玄関のチャイムを押すと、出てきたのは40代くらいの営業マン風の男性。イカつい雰囲気は一切なく、かといって飲食店の店長のような客商売風でもない。ラフなジャケットを着て、Gさんの会社のエンジニアにもいそうな風貌だったという。
あとからわかったことだが、男性はそこの責任者(店長)で、オーナーは別にいる。彼は注文を受けて、女性を派遣したり、ドライバーを配置したりする仕事をしているようだった。
「室内の広さは2LDK。靴を脱いで中に入ると、リビングが事務所で、あと二部屋は女性の待機場所になっていた。私が行った日は女性が二人いて、いずれも30代半ば。派手でも清楚でもなく、容姿も服装も、すべてが中くらいでした」