台湾が香港の二の舞になることは避けなければならないが・・・

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(英エコノミスト誌 2022年4月23日号)

「米国は中国の準備資産の凍結や没収にまで本当に踏み込めるだろうか」

 中国銀行の取締役をかつて務めた王永利氏は先月発表した一文でこう問いかけた。なるほど、簡単には答えられないよい質問だ。

 ロシアがウクライナに侵攻した後、米国とその同盟国はロシアの中央銀行に重い制裁を科し、同国の外貨準備のおよそ半分を使えないようにした。

 またロシアの大手銀行の一部を西側の金融システムから切り離したほか、多くのハイテク製品のロシア向け輸出も禁止した。

 では、もし中国が台湾侵攻のような地政学的に軽率な行動を起こしたりしたら、西側陣営はロシアに科したような制裁を中国にも科すことができるのだろうか。

欧米の金融覇権はなお健在

 米国と同盟国は間違いなく、その手段を持っている。米コーネル大学のエスワー・プラサド氏は「金融の支配力の中心はまだ西側にしっかりとどまっている」と語る。

 中国は恐らく、3兆2000億ドルに上る外貨準備の約3分の2を西側諸国の国債やそれに類するもので保有している。

 その額が非常に大きいため、現実にこれらの代わりになる富の蓄積手段はほとんどない。

 また、欧米諸国が自国の金融機関に中国の銀行との取引を控えるよう指導すれば、中国の銀行は米ドルやユーロ、英ポンドを調達できなくなる。

 だが、そこまで踏み込むことが本当に西側にできるのだろうか。

 中国の外貨準備「凍結」は、それほど大きな不安定要因にはならないかもしれない。仮に中国が西側に対する腹いせで保有する国債などを投げ売りしたいと思っても、制裁を科されていたら、売ることができない。

 中国はそうした証券を新たに買うこともできない。だが、債券市場は中国の不在をそれほど気にしないだろう。

 中国はこのところ、大口の買い手ではなくなっているからだ。

 それに、もし台湾が侵攻されれば市場はパニックに陥り、民間の投資家の資金が高格付け債にどっと流入するきっかけになるだろう。