この理由から、中国との貿易を妨害すれば、輸出品を含む自国の生産にも打撃が及ぶ。

 ウィーン経済経営大学のガブリエル・フェルベルマイヤー氏が共同研究者らと行ったシミュレーションによれば、もし中国からの輸入を90%超削減したら、米国とその同盟国の輸出はほぼ10%減ることになる。

中国の巨大市場が武器

 中国が行使できる影響力の最大の源泉は、自国の巨大な市場だ。

 例えば、米国は半導体など特定のハイテク部品が中国に出荷されるのを止めたいと思うかもしれない。

 だが、米ボストン・コンサルティング・グループの試算によれば、出荷を完全に禁止すれば米国の半導体企業は売上高の37%を失い、12万人超の雇用が危うくなる。

 片や中国は、多くの電子製品で使われる「レアアース」の輸出抑制に動くかもしれない。

 これが実行されれば、電気自動車向けバッテリーやそのほかのニッチな製品のサプライチェーンが途絶する恐れがある。

 中国は、敵国が手放したくないと思っているかもしれない市場から、相手を締め出すこともできる。

 例えば、欧州の制裁は当初、24億ドル規模のロシアの高級品市場を対象外にした。いわゆる「グッチ免除」だ。

 データ収集会社スタティスタによれば、中国の高級品市場の規模は年500億ドル超に上る。