(英エコノミスト誌 2022年4月16日号)

ロックダウンされた上海で住民の新型コロナウイルス感染症の検査を行う医療関係者(4月16日、写真:Featurechina/アフロ)

習近平国家主席は極めて重要な年にお粗末な判断を見せている。

 中国政府は数十年先を見据えて計画を立てると言われることが多い。民主主義国が急に方針転換したり、ためらったりする一方で、中国は注意深く長期戦を戦うとされる。

 だが、上海では今現在、戦略的な才覚の兆候はあまり見られない。

 世界の国々がすでに経済活動を再開しているのに、上海は市内全域がロックダウン(都市封鎖)されており、2500万人の住民がマンションに閉じ込められ、中国の検閲当局ですら隠し切れない食料・医薬品不足に見舞われている。

 ゼロコロナ政策は、中国共産党がすぐに出口を用意できない袋小路と化した。

3つの問題に同じ根っこ

 中国は今年、3つの問題に直面している。1つはこの新型コロナウイルス感染症であり、残る2つは伸び悩む経済とウクライナでの戦争だ。

 いずれも別個の問題だと思われるかもしれないが、それぞれに対する中国政府の反応は同じ根っこから生じている。

 表向きは威勢よく傲慢、裏では支配に血道を上げ、あやふやな結果を生んでいるのだ。

 最近の中国の行動は、古代の伝説上の帝王「黄帝」のごとく遠い先のことまで見通したステートクラフト(外交術)の成果などではなく、政策をなかなか調整できず、間違えた時に認めることもできない習近平国家主席の下の権威主義的な体制を反映している。

 習氏にとって、今年はすべてが筋書き通りに進まなければならない年だ。

 秋に開催される5年に1度の中国共産党大会で総書記3期目を発足させると見られており、2期10年で退く慣例を無視し、終身支配に道を拓く。

 この即位をスムーズに執り行うには、中国自体が安定・成功していなければならない。

 いくつかの面では、習氏は勝利を収めている。

 プロパガンダ(宣伝工作)担当者は、大国のなかで最も低い新型コロナの死亡率と、2018年以降、20カ国・地域(G20)のどこよりも大きく成長した経済について豪語できる。

 欧州が戦争状態に陥るなかで、中国は離れたところで安全を確保し、増大する核兵器と軍事力と資金をもって太平洋からカリブ海まで戦力を投射することができる。