原則論繰り返す習近平の優柔不断さ
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、中国はロシアに対する制裁に反対しつつも、ロシアを明確に支持する姿勢は見せていない。
習近平国家主席が、3月18日のジョー・バイデン米大統領との電話会談、4月1日の欧州連合(EU)のシャルル・ミシェル大統領やウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長との会談で主張したのは次のような基本姿勢だった。
「中国は、国連憲章の趣旨と原則を順守し、国際法と公認された国際関係の基本原則を守る。各国の主権と領土の一体性を尊重し、対話と交渉を通じて紛争を平和裏に解決することを支持する」
対外的には中国政府はロシアにもウクライナにもつかず、「中立」の立場をとっている。
だが、中国国営メディアの人民日報や新華社は、中国国内向けにはウクライナ危機における米国の「役割」を厳しく糾弾。
ロシア側の一方的な主張をあたかも事実であるかのように報じ、米国こそがすべての元凶だと報じている。
(https://www.fpri.org/article/2022/03/the-invasion-of-ukraine-shows-chinas-inability-to-lead/)
「戦争の元凶は米国」と中国メディア
国内向けの中国メディアのウクライナ関連報道を精査した北海道大学の徐行准教授によれば、人民日報や新華社を代表とする中国メディアは、ウクライナにおける凄惨な戦場の現状、特に欧米メディアが注目している市民の被害状況や難民問題をほとんど取り上げていない。
中国中央テレビはロシアメディアやロシア軍による映像・写真を直接引用する形で戦況を紹介するが、ウクライナ側の情報発信をほぼ無視しているという。
つまり、これほどの「戦争犯罪」や「ジェノサイド」が21世紀の今、地球上で繰り返されているにもかかわらず、「真実」を報道すべきジャーナリズムの責務を中国メディアは放棄しているのだ。