先手打ったスミスの退会声明は見え見え
「カオスに陥ったハリウッド」(Chaos in Hollywood)
ロサンゼルス・タイムズはタキシードの黒人の男(ウィル・スミス)がもう一人の黒人の男(クリス・ロック)を平手打ちしている瞬間をとらえた写真を一面トップに掲載してこう報じた。
3月27日に開かれた第94回米映画・芸術科学アカデミー(AMPAS)の授賞式での出来事だった。
(後述するが、平手打ちした男は事件5日後の4月1日、米エンターテイナーにとっては最高のアカデミーの会員を自主的に退会した。腹を切っても主演男優賞だけは手放したくないのかもしれないが、これで終わりそうにない。もっと厳しい措置が4月18日に下りそうだ)
この場面は全世界に流れたから読者諸兄もご覧になったはずだ。
すでにSNSなどではその後の経緯を含め、微に入り細に入り報じられており、耳にタコかもしれないが、ざっとおさらいするとこうなる。
「たかがハリウッド、されどハリウッド」
特に映画に興味のない方は苦笑されるかもしれないが、ハリウッドの威力は侮れない。
ハリウッドの年間GDP(国内総生産)は5040億ドル(約61兆2500万億円)。北朝鮮のGDP(149億ドル)の34倍。アイルランドと同じだ。
お金だけではない。ハリウッドが米社会、政治に与える影響は計り知れない。米政治を大きく左右する世論形成の一つの大きな要素になっているからだ。
平手打ちを食らったロック(57)は、第94回米アカデミー賞のドキュメンタリー最優秀賞授賞の司会役を務めた黒人スタンドアップ・コメディアン(お笑い芸人)。