米連邦議会への乱入事件を巡って妻が俎上に上っている米最高裁のクラレンス・トーマス判事(2021年4月23日撮影、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

米国も世界も「ウクライナ」だけではない

 ロシアによるウクライナ侵攻への対応に苦慮するジョー・バイデン米大統領だが、米国民にとってウクライナばかり心配しているわけにはいかない。

 目下の最大の関心事は対ロ経済制裁のしわ寄せで生じた異常なガソリン価格の急騰、日常食品の値上がりだ。バイデン政権発足以降、慢性化した史上最悪のインフレに陥っている。

 新型コロナウイルス感染率は激減し、「三密」規制も大幅に緩和されたが、パンデミック禍へのバイデン政権の対応にも不満たらたらだ。

 バイデン氏の直近の支持率は、前任者ドナルド・トランプ氏よりも低いといった世論調査すら出ている。

 今、大統領選挙があったら、47%の有権者がバイデン氏(41%)ではなく、トランプ前大統領に票を入れると言っている。

https://thehill.com/homenews/campaign/600146-poll-trump-leads-biden-harris-in-2024-matchups

 ウラジーミル・プーチン露大統領は、ウクライナ乗っ取りの代償として欧米を敵に回す一方で、バイデン氏の足元を掬っている格好だ。

 プーチン氏がウクライナへの攻撃の手を緩めないのも、経済制裁を逆手に欧米日の経済を混乱させれば相手も困るはず、という読みがあるからだろう。

 それが見事に成功している(?)というのが現状だ。

 元々、米国民はウクライナには関心がなかった。ところが戦闘が長引く中で、多くのウクライナ市民が戦火に巻き込まれて死傷し、300万人超が国外に逃れている映像を連日見せつけられては、他人事とは思えなくなった。

 米国内にも「プーチンはやりすぎだ」といった反プーチン気運が高まり、米一般大衆もバイデン氏に強い対応を求め始めた。

 当初から軍事介入には反対だった米国民が、経済制裁、武器供与には諸手を挙げて賛成し始めた。

 バイデン氏の外交は、トランプ氏に比べて弱腰だというレッテルを貼られてきた。それが脳裏にこびりついているのか、バイデン氏はプーチン氏ついて「独裁者だ。政権の座を去れ」と毒づいた。

 これが「内政干渉だ」「和平交渉に支障を及ぼす」と諭されるや、「個人的な憤りの吐露だ」と釈明したが、前言は翻していない。

 バイデン氏は、日欧の協力を得て、対ロ経済制裁を極限状態にまで強めた。その結果が物価の急騰だ。

 忘れていけないのは、米国も世界も「ウクライナ」だけで動いているわけではないことだ。