(岡村進:人財育成コンサルタント・人財アジア代表取締役)

 いま流行っている「パーパス」という言葉をご存知だろうか?

 世界的には10年以上前から企業や経営の「存在意義」を問う際に使われていたようだが、SDGsが社会的認知度を高め、それを経営目的に据える企業が増大するにつれて、より頻繁に見聞きするようになった。ここ何年かは、人財育成の世界にも展開しつつあるように思う。

 へそ曲がりの筆者はそういう流行り言葉を聞くと、体内の警戒信号が鳴り響く。流行り言葉に踊らされる人ほど、迷走することを筆者は経験則上知っているからだ。

流行りのビジネス用語に意味はあるか?

 なぜ日本語の「目的」ではいけないのか? 英語で新たな思いを吹き込みたいということなのだろうが、それでは「パーパス」に込められた思いや真意を深く考えている人がどれだけいるのか。

 私には、日本人には語感の乏しい英語を使うことで、みなが分かったような気にさせるだけで、むしろ曖昧な認識を深掘りせずに放置することを助長しているように思える。だから、とっても危険なのだ。

 そもそも企業の存在「目的」についていえば、ミッション(使命)やビジョン(期限付き目標)などの言葉が元々存在していた。何のためにわが社は存在するのか? いつまでに何をやるのか? ミッションやビジョンは、長期持続的に成長し続ける企業なら、だれもが大切にしてきた経営の原点だろう。

「パーパス」には、サステイナビリティへの思いを込めているのだと書いている方もいるが、それならば真の一流企業がとうの昔に考えていることだ。いまになってパーパスと連呼するのを見ると、「企業の当然の使命を考えずにさぼってきたのか?」といぶかしく感じてしまう。

 元々使ってきた「ミッション」を今度こそ皆の思いのこもった言葉に置き換えればいいだけではないか。流行り言葉が出てくるたびに資料を作らせるのでは、若手があまりに可哀そうだ。