アメをぶら下げても止まらない「脱香港」
リンゴ日報の廃刊は、香港の国家安全法の下、上場企業であっても政府の判断でいとも簡単に潰されることを世界に示した。異常な「ゼロコロナ」政策と、その後のコロナ対策を巡る迷走で明らかになったのは、国際ビジネスセンターとしての香港の欠格事由だった。そして、ウクライナ紛争ではロシアに近い「中国」へのリスクが改めて想起された。
一連の動きを最も端的に反映したのは、香港株式市場の低迷だ。3月15日に1万8415ポイントまで暴落した香港ハンセン指数は4月に入り2万1800〜2万2000程度まで回復しているが、その戻りは鈍い。
ペッグ制によって米ドルとの交換レートが7.75〜7.85に固定されている香港ドルが年明け以降、上限の7.85に向けてどんどん切り下がっている(米ドルに対して香港ドル安)。金融市場の動きだけで言えば、相変わらず「香港売り」が続いていることになる。
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3月末の香港の外貨準備高も、前月比で95億米ドル減少している。総額は香港の総貨幣流通量の約6倍の4816億ドルなので全く危機的状況ではないが、率にして1カ月で2%減少するのは米金利高によるマネーの動きを勘案しても、筆者はやや違和感がある。
4月から入国時の強制隔離措置が最短1週間に短縮された香港だが、いまだに香港居住者(香港ID所持者)以外の入国は認められていない。米英等9カ国との旅客便運航禁止措置を撤廃しても、あれだけ過密だった香港国際空港は依然、閑古鳥が鳴いている。
4月9日(土)午前0時からの24時間で、香港からの出発便は23便、到着便は20便。欧米向けと豪州向けの便はない。幸い日本便は1日3~4便運航しているので日本人の自分は「いつでも帰れる」との安心感があるが、この有様では欧米企業や欧米のビジネスマンが香港をビジネス拠点として活用できないと見限るのも当然だ。
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