ドイツIT企業で多発する意外な事件

 滞在中のドイツで、筆者は、「ここには便利なはずの使い捨て文化がないのでは?」と感じることがあった。

 そう思ったきっかけは、ヘッセン州にあるアジア系IT企業で、箸の盗難事件が問題となっているという話からだった。

 この企業で働くのはアジア系エンジニアたちだ。彼らはほとんどが弁当持参で出社するのだが、米国育ちのエンジニアのT君は「最近、社内で箸がしょっちゅう盗まれるんですよ」と言う。

 T君は「課内で1人を除いて全員が箸を忘れた日があり、昼食をとるのに1つの箸を使い回して食べたこともありました」と話す。コロナ感染も気掛かりだが、腹が減っては仕事ができない、というわけだ。

ドイツは「便利さ」を産業にしない?

 T君のエピソードを聞いて、 “箸文化”ではないドイツで箸がどれほど貴重品かを思い知らされた。

 同時に、実感したのは日本の生活がいかに便利なのか、ということだ。コンビニ、スーパー、100円ショップでは、生活に必要な、ほぼあらゆるものが売られており、もちろん箸やそれに代わるスプーンやフォークもすぐ手に入る。